建物の概要

構造:木造2階建、和小屋
設計:里見弴

【主屋】

  • 規模:1階195.47平米、2階98.72平米
  • 延床面積:294.19平米
  • 屋根:銅板瓦棒葺き寄棟、一部亜鉛引鉄板葺き外壁:南京下見板張り、一部モルタル塗り
  • 基礎:コンクリート布基礎

【別棟和室】

  • 規模:1階5.90平米、2階43.12平米
  • 延床面積:49.02平米
  • 屋根:草葺き入母屋
  • 外壁:土壁の真壁

【建物の沿革】

1926年(S1) 里見弴、西御門に住まう。
1936年(S11) 里見弴、雪ノ下へ転居
その後も弴は御成町、小町、扇ケ谷等、鎌倉各地に居住
1938年(S13) 一時期 西御門に戻る
戦後 GHQによる接収、幾人かの所有者・使用者、ホテルとしての使用を経る
1963年(S38) 石川様所有
1994年(H6) 鎌倉市重要景観建築物等(指定第8号)に指定
2007年(H19)

11月~

一級建築士事務所 studio acca が石川様から賃借する。
2008年(H20)

4月~

「西御門サローネ」と称して一般公開を始める。文化活動のためのスペースとして貸し出すことで、歴史的建物の維持、利活用を試みている。

建物の特徴

【主屋】

  • 外部:大谷石を用いたポーチ、リブが付けられた柱が特徴的。この2点は、大正12年に帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライトの影響と考えられる。
  • ロビー:「プリンスホテル」と称され、ホテルとして利用されていた当時以来継承されている赤絨毯。六角窓や階段手すりの装飾も、ライト的なデザインともいえよう。
  • 応接間:換気窓をはじめ、換気への配慮は各部屋に見られる。両折戸の蝶番も特徴的。セントラルヒーティングも完備していた。元ボイラー室に煙突跡を確認できる。
  • キッチン:生ごみでメタンガスを発生させ炊事に利用していた[1]
  • 廊下:明治以降普及した住宅形式の1つ、中廊下式住宅の構成をとっている。サービスエリアと表のエリアを分離する構成は、扉の大きさの違いなどからも明らかである。

[1] 里見弴次男鍼郎氏のコメント

【和風別棟(書斎)】

  • 施工者:小屋組の幣束の両面には「施主山内家 棟梁 高橋久次郎・下島松之助 蔦頭岡崎治助」「昭和四年吉日とある[2]
  • 室内:建具の下部は無双。上部は竹、白樺、杉板等によって網代天井、竹の棹縁の天井、船底天井が構成されており、茶室とも捉えられる。また、谷戸の稜線を思わせる櫛形のモチーフが、欄間部分と書院の障子上部の2箇所にみられる。
  • 和風別棟周辺の庭:井戸や、アプローチも里見弴の趣向によるもの。畳に正座し、東南の窓越しに眺める山の稜線が美しい。

[2] 鎌倉市指定洋風建築物選考資料石川邸、鎌倉市都市景観部景観課

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